音

タクシーの過ぎ去りし音夜長し

乳呑み児の乳に吸ひつく秋夕焼

専修大学テント場撤収

秋暁やテントで目覚めし日々のあり

超笑顔

じんはりと痛みうづめて長き夜

夫ともにゐる秋の夜の明けてゆく

産声は秋の嵐を貫けり

あきちゃん！と飛び込んで来し超笑顔

おくるみの児を真ん中に秋の晴れ

帰り道

三人で帰る道々黄金の穂

待つ

稲穂揺るるただ産まるるを待つばかり

天高し紆余曲折の結果いま

秋色

夕暮れの灯は秋の色音楽祭

お盆

線香を焚いて港を見下ろせり

線香の火を鎮めをり墓参り

嫁ぎ来て送り火の日の汐の風

紫陽花

紫陽花の中に紫陽花ぽちと咲けり

雨雫纏ひしまま紫陽花を摘む

耳

融けてゆくかきごほりに耳傾ける

空耳は空耳のままにして麦茶

耳閉じて目を閉じ冷酒広がりぬ

胎動

こぽんこぽん生命息づく梅の雨