大田黒公園

爽籟やふと一人居の池の端

子規の忌や子規は盥で鯉を見し

秋光や鯉をはぐくむ丸き石

秋めけりまだ色付かぬもみぢさへ

黒揚羽追ふ一頭も黒揚羽

体温の馴染んでくるやくぬぎの実

大胆な朝顔屋根の高さまで

散歩

秋風にさらはれさうになる帽子

秋空へまだ半袖の腕伸ばす

天高し天を指したき影法師

秋風に自由に遊ぶ髪の先

蘂欠けしまま天仰ぐ曼珠沙華

秋風や石の仏に宿る笑み

メール

秋風をもらひて白き一筆箋

秋風に待たぬメールのそこに在り

秋風や一字一句を空んじぬ

履歴書

涼新た履歴書に文字埋めゆけり

秋

待ち合はす人待ちをりし秋日傘

床拭けばその床をゆく秋の風

秋の燈に長き小説めくりゆく

逢へること祈る一途に星逢ふ夜

秋の気配

陽を透かしピンクにそよぐ芒かな

爽やかやお御堂で手を合わす朝

夏野菜

夕まぐれ曲がつた胡瓜買ひにゆく

苦瓜に街に響くや5時の鐘

風鈴や玉ねぎの透きとほりゆく

洋楽にトマトは薄く薄く切る

懐かしき話の尽きてパセリなど

夏の湖

空の青深く映せり夏の湖

夏旅の果て辿りつく吾が独居

お花畑～黄

黄を灯すお花畑をゆく日かな

黄の花へトコトコ歩く夏の山

黄の花はシナノキンバイと師は尊し

シロウマもミヤマもタンポポは黄色

背伸びして黄を溢れさす兎菊

大雪渓

足跡に足合はせゆく大雪渓

風吹けば雪の冷たさ大雪渓

黄緑のザックカバーや大雪渓

大雪渓鋭き峰の輝けり