二上山

春溜めて遠き盆地へバス走る

春の山満身創痍の女を抱く

下萌やふはりふはりと人の恋

満たされし恋も悲恋も山笑ふ

万葉の恋おほらかや春満月

ただいまのメールとばしむ春の闇

梅～追加

梅の精になつたつもりの翼かな

白色は不思議いろいろ梅の白

梅

ひらきつつ紅ふくよかや木瓜の花

風吹いて梅のかすかに紅づいて

白と言へど白さまざまに梅の花

紅梅に紅梅の精「道知辺」

梅咲くや子の産まるるを待つてゐる

田遊び

三寒を身に連れ立ちて立ち尽す

田畑に民あり神あり春近し

夜焚火や口承の唄続つづきをり

着膨れの伸ばさるる手に酒わたる

獅子役は校長先生かも知れず

太郎次や安女や吾もいつか子を

牛役も着膨れもみな民と民

まだ冬の月あり祖母のやうな人

風光れ

世界中に子どもあふれて風光れ

子供の情景

５００円初めてのチョコあげるため

早梅やきつとおひさまあたるばしょ

卒業を待つ消しカスをこねながら

春

計算の中にだけまづ春の来る

居眠りの頭に春の日が光る

どこまでも深き眠りや風車

国境を陸路で春を追ひかける

風花

風花やゆっくりゆっくり帰る道

風花や父親の押す乳母車

風花のふっと消えゆく五階かな

おひさまの力風花光けり

顔

月曜の顔火曜の顔梅ひらく

顔ひとつひとつ異なり春は来る

火曜日は闘いの顔ブーツ履く

寒雀手を振る招き猫の顔

猫に顔舐められる夢春隣

慰労会

呑むだけのため雪のため大宴