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流されるままに。 呑んでいればご機嫌。
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いつか着く、どんなに足が動かなくてもいつか着く。そうはわかっていたけれど、テント場は果てしなく遠かった。やっとたどり着いたテント場で、先週と同じようにテントを張り、お隣さんに呑みましょうと声をかけ、先週と同じように小屋でメンチを買う。500円の缶ビールをしゅぱっと開ける。明日はどちらに?なんて話しながら、先週踏んだ白馬の頂上に思いをめぐらす。

後発隊3人が無事合流し、一晩眠った翌朝。私たちは5人で歩き始めた。白馬の頂上までは、コースタイム約30分。傾斜もそんなにきつくない。シャリバテだった人も、前日のシャリバテが嘘のように軽快に行く。電車に乗り損ねた詩人が振り返って叫ぶ。「ほら、見なさい!」。振り向くと、真っ青な空に、剣岳。重い荷物も忘れ、剣岳に見とれる。そして、頂上への足が速まる。

きれいだったなぁ。先週見たばかりの、頂上からの眺めを思い出す。空は真っ青で晴れ渡り、敬虔な気持ちが湧き上がるはずの素晴らしい山々。立山連峰、そして剣岳。感動と達成感に浸り、祈りに似た感情が生まれるはずだった。きれいだったなぁ。

わたしはその白馬の思い出の中に、今までの数少ない山行で必ず感じてきた、自然を敬い、一体化する摩訶不思議な喜びを再現することができない。あの祈りのような、ちっぽけな自分が生きている感謝、大自然に対峙し、その大自然の中にいる感動。そういうものが、全く思い出せない。そのことに気付いたとき、わたしは焦りを覚えた。朝日岳までの長い一日、その後も続くはずの山行への不安、ここに来るまでに感じてしまった疑問符。わたしの魂は、たぶん純粋に自然と対峙することができなかったのだろう。現世の宿題を抱え、美しい雄大な自然を前にしていながら、その真っ只中に浸かってしまっていたのだろう。あんなきれいな景色を見て何も感じなかったなんて。もう一度、白馬へ行こう。もう一度、白馬岳の頂上に立とう。そう思い立った結果、今またここで、缶ビールを呑んでいる。

明日は頂上でご来光を待つことにしよう。
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