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流されるままに。 呑んでいればご機嫌。
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社会人になったあとの、自分の来し方を辿っていた。

会社の経営に興味があって、銀行員になった。
経営者の役に立てるかな、そんな甘い思いがあった。
そのうち、生きている実感がなくなってきた。
10年後の借入レートを今固定しましょう。そんな提案、私にはできなかった。
生きている、という気が全くしなくなってきた。
心が壊れた。
身体も壊れる。そう直感して銀行から逃げた。

銀行を辞め、約1ヶ月休んでからインドへ行った。
インドでは、カーリーガート、日本語は「死を待つ人の家」と言われる施設へ通った。
そこは独特な空気が流れていた。
あたたかな空気。
患者が男女50人ずつ、だだっぴろいところにベッドを並べている。
患者にはエイズもいるし、肝炎もいる。
運ばれたときは蛆虫が湧いている。
蛆虫防止に髪を剃る。
シスターと地元のワーカーとボランティアが介護をする。
食事を配り、シーツを洗い服を洗い、屋上に干し、ベッドメーキングをし、薬を配り、手を握る。
今日運ばれてきたおばちゃんが明日亡くなる。
回復したおじちゃんが道へ返される。
10年いた推定90歳のおばあちゃんが死を迎える。

カーリーを中心としたカルカッタでの生活。生きていていいのだ、生きているって、生まれてきたっていう、それだけで奇跡的なことなんだ。生まれて初めて、そう思った。
日本に帰ろう。
日本でちゃんと生きよう。毎日を大事に生きよう。そうして日本に帰ってきた。一年派遣で働き、生活基盤を作るために経理として正社員になって、今に至る。

   そんなことをね、今日は思い出しながら歩いていたんだ。

日が落ちて、暗くなってきた淀川小屋の宵。夕食を食べ終わり、まったりと過ごす長い夜の入り口。同行者の足をマッサージしながら、ぽつぽつと語る。光はただキャンドル。同行者は眼を閉じて、ただ私の話を聞いている。小屋のデッキのベンチで柱にもたれ、私に足をあずけ、そして静かに聞いてくれている。時間はゆっくりと流れてゆく。
ありがとう。その想いが喉まで出かかる。そして呑みこむ。代わりに、自分のことをゆっくりと話す。彼の足へ、感謝を込める。足を私にあずけ、眼を瞑ったまま、彼がつぶやいた。

  幸せだなぁ。

私の目に、涙が、静かに溢れる。
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