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流されるままに。 呑んでいればご機嫌。
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長い長いトロッコ道を歩いていた。

山での挨拶は、普通「こんにちは」である。お互いに「こんにちは」と言ってすれ違う。ところがここでは「お疲れさまです」「頑張って」と声をかけられる。彼らは山登りの人間ではなく、都会からの旅行者であり、縄文杉を見終わった先輩だったのだ。山登り、というより、縄文杉、という目的地のあるかなりきついハイキングなのだ。

ところで、先を行く同行者が、追いついた私に聞いた。

 帰りの人が道を譲るという暗黙のルールがあるのかなあ。

行く人と帰る人がすれ違うことができるよう、一応舗装された板は二本道になっている。ただ、舗装されたところの左右も、決して歩きにくい道ではない。ぶつかりそうに板の上を歩くより、どちらかが土へ降りることになる。私はそこにルールを感じなかった。なぜなら、自分が先によけて舗装された板から下りて土の上を歩くこともあったし、逆に向こうがよけてくれることもあったからだ。そうなの?と生返事をした。

まっすぐな道で向こうから人が来るのがわかったら、向こうの先頭の人と私と、すれ違うまでの間に、微妙なやりとりがある。どちらが譲るか。人が見えたら、向こうは複数のことが多いから、一人の私がよけたほうがロスが少ない。私はかなり早くから、自分が道を降りる。疲れて動きたくないなぁと思っていると、その動作が遅れて向こうが右または左にずれてくれる。または向こうが優しいガイドさんだったら、私を屋久島のお客さんとして、譲ってくれることが多い。相手に気付いてからすれ違うまでの微妙な関係は、無言の勝負のようでもある。そして、ここは日本であり、私は日本人らしく、さっさと勝負を放棄するし、大抵向こうもそうなのだ。そしてすれ違うときに、「こんにちは」と言って勝負を称えあう。「お疲れさま」または「頑張って」という声をかけてくれるのは、たいてい譲ってくれた人だ。そうなのだ。何のことはない。彼は我が道を行っていたのだ。人が来ようが来るまいが、見えないのか気にしないのか、ずんずんとその道を行く。先方が、必ず先によけることになる。モーゼになることもある。前から来る集団の先頭も直前まで勝負を放棄しなかった場合だ。集団は個人個人が慌てて右と左に割れ、自然彼の道ができていくのだった。


もくもくと歩いてゆけば夏北斗

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